……ったく、失礼なヤツ。
なんだかちょっとムカついて、
「坂井の話なんか無視してパスタ食べていいんだからね」
と雪岡に向かってそう言った。
「……えっ!?」
自分が話しかけられたことに気付いて、驚いたように大きな目を更に大きく見開く雪岡。
……うわ。
まっすぐ顔、見ちゃったよ。
「……じゃあ、すぐ戻る」
ふい、とすぐに視線を外して歩き出し、そしてトイレに続く細い通路に入ったところで足をとめた。
座っていたテーブルからは見えないことを確認して、思わず通路の壁に背中をつきため息を吐き出す。
……鳴りやまないピアノの音。
雪岡の顔を見たらきっと、痛みはひどくなる。
……その予想はやっぱり当っていて、頭の中にはさっきとは比べ物にならない音量で、綺麗すぎるメロディが溢れていた。


