「……っ」
水無月くんも今気付いたようで、バッ、と勢いよく私の肩から手を退けた。
な、なにこれ。
恥ずかしい……っ!
「ちゃんと着いてきてるか振り返ってみたらなんか立ち止まってるし、おまけに肩まで抱いちゃって……!航、お前手早すぎ!」
見損なった!と憤慨している今野くん。
その隣で、このみちゃんが唖然とした表情を浮かべていた。
そして、口パクで、『これ、喜ぶとこ?』と言ってきた。
どうしてそんなことを言うのかはじめは分からなかったけれど、そっか、このみちゃんは私が水無月くんのことを好きだって知ってるから……。
好きな人にこんなに接近できたら普通、嬉しいもんね。
……私は、そんなことを感じる余裕はなかったけれど。
それに、もう諦めようとしてるんだし……。
喜んでいいのか、憤慨すればいいのか、戸惑ったようなこのみちゃんに、私は曖昧な笑みを返すことしかできなかった。


