急に、強い力でグイッと肩を掴まれた。
驚いて声も上げられられないまま、引かれるままに身体が傾く。
え、何！？
そう思った時には、自転車が私のすぐ横を通りすぎていくところだった。
もし引っ張られなかったらぶつかっていたと思うほど、近い距離を風のように抜けていく自転車。
「あ……」
ようやく引っ張られた理由が理解できて、そしてそれと同時に、私の肩を掴んだままのその人にも気づいた。
「み、水無月くん……」
顔が熱い。
後ろから自転車が来ていることにも気付かずにぼんやりしていたことが恥ずかしくて。
水無月くんに迷惑を掛けてしまったことが申し訳なくて。
なんだかいたたまれない気持ちになった。
「ごめんなさい、私……」
俯く私に、すぐ上から水無月くんのため息が降ってくる。
「何回危ないって言ったと思ってんの？ボーっとしすぎ」
呆れたような、水無月くんの声。
「ごめんなさい……」
