私自身、今年が初めての参加だから想像しかできないけれど、先生や先輩方の話を聞いている限り、とても楽しそうで、今からわくわくしていた。
……私の場合、演奏会の方の演奏者でもあるから、緊張もするんだけど。
12月に入る頃の試験が、どうやらクリスマスパーティーの演奏者を決める選考も兼ねていたらしく、ありがたいことに演奏する機会を頂いたんだ。
「明日、梨音の演奏楽しみにしてるね」
「……うん、頑張るね」
ふたりで他愛のない話をしているうちに駅までついた。
このみちゃんと別れ、電車に揺られながら頭に浮かんでいたのは、水無月くんのこと。
あの日から。
……文化祭のあと、好きって言ってもらえたあの日から、水無月くんとはほとんど会っていない。
試験が近くてピアノや勉強に忙しかったっていうのもあるし、スランプを抜け出したばかりの私には、まだまだ自分の演奏なんてできていない状態で、納得できる演奏ができるようになるまでは、ダメだと思ったから。
会ってしまったら、簡単に想いが溢れてしまいそうだったから。
……あの頃より、私にしかできない演奏、できるようになってるのかなぁ。
水無月くんに受け入れてもらえるようなピアノに近づいているのかなぁ。
「……はぁ」