母の姿を。

母の目を。


まっすぐに見られないと思ったのは、その日が生まれて初めてだった。


それに、母の瞳に映ったように見えた俺に対する憎しみは、決して思い過ごしなんかではなくて。


……その日から母は、まるで何かに取り憑かれたかのように朝から晩までピアノから離れることなく弾き続けるようになった。


食事すらろくにとらない母の身体が心配になってピアノを弾いているところに行けば、それだけでヒステリックに「あっちへ行け」と叫ばれる。

俺の存在そのものを嫌悪しているかのように扱われ、最初はそれがどうしても受け入れられなくて、なんとか前の母親に戻ってもらおうとしつこく話しかけたりしたけど、母のもとに行くたびにきつく跳ねのけられて、そのたび傷付いて。


……もう無理なんだと諦めたのは、父が出ていってから3カ月が過ぎた頃だった。