実習棟に伸びる細い廊下。
大勢の人でにぎわう場所からそこに一歩入っただけで、同じ校舎内とは思えない静寂があたしたちを包んでいる。
……目の前には、今野くん。
背中はしっかり壁についていて。
同じく壁に押しつけられた手首は、相変わらず今野くんに掴まれたままだ。
「……え」
間の抜けた情けない声が唇からこぼれ落ちた。
な、ななな何、この状況……っ！
訳も分からず、かああっと顔に熱が上がってしまう。
思わず真正面の今野くんから顔を横にそむけていた。
誰か、あたしに教えて欲しい。
……どうしてこんなことになってるの？
「……こっち見てよ」
ため息を含んだ少し掠れた声が、耳のすぐ傍で響く。
「っ」
耳朶に触れた柔らかな吐息に、ぴくりと身体が小さく跳ねた。
そんな自分に恥ずかしさが勢いよく込み上げてきて。
心臓がドクドクと脈打つ速度を速めていく。
