「え。こ、このみん?」
後ろからは困ったような声が聞こえてくるけど、気にしない。
こんなところで「好き」なんて言うコイツの神経が本当に信じられない!!
「このみん、どこ行くの」
「知らないよ!!」
本当、一体どこに行こうとしてるんだろう、あたし。
恥ずかしくて逃げてきちゃっただけだし、目的地なんてない。
乱暴に答えたら、「じゃあここでいいんじゃない」という言葉が聞こえた気がした。
なんとか耳に届いた微かな声。
「今、何か言っ……、きゃ」
訊き返そうとしたら、引っ張っていたはずの手を強い力で引き寄せられて。
「痛っ!」
ドン、と背中に衝撃が走った。


