教室を出ても、立ち止まることなんかできなくてただただ人混みを駆け抜ける。
自分がいったいどこに向かっているのか、どこに行きたいのかもわからないまま、逃げていた。
今まで知らなかった自分の感情が怖かった。
簡単に心を動かされるのが、怖かった。
逃げたって解決するわけじゃないってわかっているのに。
「……ん、このみんっ!!」
「きゃあっ!?」
グイッ、と突然進行方向とは逆に身体が引っ張られ、抵抗する暇もなく身体が温かい何かに包まれた。
な、なに……っ。
何が起きたのか分からないまま、身体が硬直する。
「……やっと止まった」
はー、と吐き出された息と共に耳朶をかすめたのは、今野くんの声。
少し上がった息。
ドキドキと早い鼓動はあたしの?
それとも……。


