「……このみちゃんのほっそい身体じゃ、私なんてはみ出るよ」



私も結構小柄なほうだけど、このみちゃんだって細いし小さいし、私が隠れられるような大きさはない。



「そこはなんとかしてよ。今だけ超細長くなるとかさ」


「……無茶言わないでよー」


ふたりでコソコソと教室に入っていったら、逆にその不自然な様子が目立っていたらしく。


「!!」



ふいに顔をドアの方に向けた水無月くんと目が合ってしまった。



瞬間、昨日のあの冷たい言葉と私を拒絶する表情がフラッシュバックする。



思わず身体を固くした私に気付いたこのみちゃんが私の手を握り、引っ張ってくれたおかげでその視線からはなんとか逃れることができたけれど、ドキドキと心臓が嫌に大きく音を立てて鳴っていた。


このみちゃんの手に引かれて空いている席に着く。



「航ー?何見てんの?」


「え?あー、別になんも!!」



私より少し離れた前の席から、水無月くんとその友達の声が聞こえてくる。


……嫌でも、耳に入ってくる彼の声。


私の耳は、他の誰よりも水無月くんの声を拾ってしまう癖がついているんだと思う。