でも、オルゴールの音を聞きつけ翔が部屋に入って来た。
翔は翼の姿に驚き、立ち尽くしていた。
「俺の部屋に勝手に入るな!」
翔は翼の手からオルゴールを奪い取った。
「お前が悪いんだ」
翔はそう言ったまま、沈黙した。
「解ってるよ。母さんが父さんに話しているのを聞いた。僕にオルゴールをプレゼントしてくれた子が初恋の相手なんだってな?」
「えっ! 知っていた!?」
翼は頷いた。
二人の間に沈黙の時間だけが流れていく。
「お袋がお前からオルゴールを奪い取ったことが納得いかなくて……。絶対何かあると思った。そこで俺はある秘策を思い付いた。覚えているか? 柿の実のことだ」
翼は頷いた。
「お袋は何故か俺ばかり可愛がる。それに賭けてみた。案の定だった」
「僕が殴られているのを見て、お前は笑ったな。まさかあれがオルゴールのお返しだったとは。お陰でハゲたよ」
翼はそう言いながら頭に手を持っていった。
愛されなくても翼は母の愛を待っていた。
待ち続けていた。
でもあの柿の実事件で、翼は思い知らされた。
自分に対する愛情など、母は一欠片も持ち合わせていないことを。
『翔! やったのはお前か!?』
柿泥棒を翼が遣ったことに納得いかない勝は言った。
『俺じゃあねえ。きっとこいつだよ』
でも翔は……
翼を指差しながら不適な笑みを浮かべていた。
『お父さん何て言うの。翔がやるわけないじゃないの。翼よ。翼に決まってる! 翼、翔に謝りなさい!』
その時……
ハッキリとキッパリと薫は言った。
(そうだった!? 母さんは僕のことを名指しで犯人だと言ったんだ!?)
抵抗した時に、襟を掴んだ薫の手。
今翼はハッキリと思い出していた。
(そうだ。だから……このハゲは出来たんだ!!)
翼はもう一度頭に手を持っていった。
翔か通販で買ったと言うサバイバルナイフ。
翼はそんな翔にそら恐ろしさを感じていた。
あの柿の実事件以来……
それは日毎に増大した。
優しかった翔の、翼に対する思いやりの減少に比例するかのように。
翔は翼の姿に驚き、立ち尽くしていた。
「俺の部屋に勝手に入るな!」
翔は翼の手からオルゴールを奪い取った。
「お前が悪いんだ」
翔はそう言ったまま、沈黙した。
「解ってるよ。母さんが父さんに話しているのを聞いた。僕にオルゴールをプレゼントしてくれた子が初恋の相手なんだってな?」
「えっ! 知っていた!?」
翼は頷いた。
二人の間に沈黙の時間だけが流れていく。
「お袋がお前からオルゴールを奪い取ったことが納得いかなくて……。絶対何かあると思った。そこで俺はある秘策を思い付いた。覚えているか? 柿の実のことだ」
翼は頷いた。
「お袋は何故か俺ばかり可愛がる。それに賭けてみた。案の定だった」
「僕が殴られているのを見て、お前は笑ったな。まさかあれがオルゴールのお返しだったとは。お陰でハゲたよ」
翼はそう言いながら頭に手を持っていった。
愛されなくても翼は母の愛を待っていた。
待ち続けていた。
でもあの柿の実事件で、翼は思い知らされた。
自分に対する愛情など、母は一欠片も持ち合わせていないことを。
『翔! やったのはお前か!?』
柿泥棒を翼が遣ったことに納得いかない勝は言った。
『俺じゃあねえ。きっとこいつだよ』
でも翔は……
翼を指差しながら不適な笑みを浮かべていた。
『お父さん何て言うの。翔がやるわけないじゃないの。翼よ。翼に決まってる! 翼、翔に謝りなさい!』
その時……
ハッキリとキッパリと薫は言った。
(そうだった!? 母さんは僕のことを名指しで犯人だと言ったんだ!?)
抵抗した時に、襟を掴んだ薫の手。
今翼はハッキリと思い出していた。
(そうだ。だから……このハゲは出来たんだ!!)
翼はもう一度頭に手を持っていった。
翔か通販で買ったと言うサバイバルナイフ。
翼はそんな翔にそら恐ろしさを感じていた。
あの柿の実事件以来……
それは日毎に増大した。
優しかった翔の、翼に対する思いやりの減少に比例するかのように。


