節子は初めて翼を見た時衝撃が走った。


(まぁ……何て可愛い子なの。でも……何て可哀想な子)

純子と忍の縁談を纏めようと勝と親戚を回っていた時に翼のことはそれとなく耳にしていた。
勝は自分の恥の部分を同郷の節子には打ち明けていたのだった。


翼と翔。
双子の身に降りかかった真実を。
翔を溺愛し、翼を卑下する娘の薫の全てを。


それは、翼だけの哀しみだけではないと言うことを勝は気付いていた。

翔も……
翔こそが、一番被害者なのではないかと思っていたのだった。


翼に対して優しかった翔。

でもとある事件が元で豹変する。

その原因が薫であることを勝は見抜いていたのだ。


翼思いの翔。
それが、薫を愛するが故に崩れてゆく。


その事実を勝は承知していた。

だからこそ、翼を可愛がったのだ。
翔の気持ちを察して……


翼同様、翔も可愛い孫だったのだ。


節子は翼が可愛くて仕方なくなった。
初めは同情だったのかも知れない。
でも節子は一途に翼を婿にしたいと思ったのだった。


だから目の前で幸せそうな二人の姿に拍手喝采を送ったのだった。

急を聞いて駆け付けてきた夫の貞夫と共に、二人の門出を見守っていた。


「良いのか? 今がチャンスだよ」
貞夫が節子に声を掛けた。


「婿にするなら今だよ」

貞夫は節子に慣れないウインクを送った。


「でも陽子にその気が無いからね」
節子はボソッと呟いた。