二重人格三重唱

 「お前、東大合格したんだってな」

翔が又訪ねて来た。


「陽子さんのためか?」

翼は頷いた。


「いつも僕を励まし、勇気付けてくれたから」
翼は素直に、陽子に対する感謝の気持ちを口にしていた。


「お前だって受かったんだろう?」


「あぁ、受かったよ。そうか陽子さんに聞いたか? お袋が会場にいたようなことを言ってたな」


「あぁそうだよ。お袋が嬉しそうだったて聞いた。良かったな」


「お袋は陽子さんのことを気にしているんだよ。だからお袋の前に出すなよ」
翔は突然言い出した。


「知ってるか?親父の暗示」
翔は急に話題を変えた。


「分かったんだろう?陽子さんと関係を持ったってこと」
翔はワザと大きな声で言った。


「汚い奴だよ、親父って奴は。狙った獲物は例え息子の嫁でも物にする。その上分からないようにしておきながら、下着一枚外しておく」


「誰に聞いた!?」
翼がよろめき立つ。


「分かっているさ!」
翔は翼に挑戦するように言い放った。


「たまたま親父が出て来るのを見て、様子がおかしかったから中に入って見た」


「何っ!!」

翼は翔の胸倉を掴んだ。


「親父の奴、やることだけやったら怖くなったんだろう。衣服の乱れを直した。でもそれじゃ面白くないと一枚下着を外しておいたと言っていた」


「聞いたのか?」

翔はうなづいた。


でも本当は翔は聞いていなかった。
全て翼を陥れる手段だったのだ。