俺の名前は、芹沢 凛。


楽しい夏休みが明けて、2学期が始まった。




「よし!今日からまた学校だ!光輝や優雅たちにまた会えるんだ!」




なんて言いながら、勢い良く玄関の扉を開けて
学校に向かった俺を待っていたものは
悪夢としか言いようがなかった。




「おっす!久しぶり!!光輝に優雅………」



元気良く教室に入り友達に声をかけると
2人の隣には、女がいた。



いや、女がいることは当たり前なんだ。
ここは共学なんだから。


ちがくて、俺が言いたいことは



「お前らが今肩を組んでる女の子は誰?」



そう、これだ。


光輝と優雅は2人して自分の隣にいる女の肩に手をかけていたんだ。



普通女の子の肩に手をかけてるなんて無いだろう?


少なくとも俺はそう思うよ



その女が彼女とかじゃなければ………



「夏休みの間に彼女が出来たんだ、俺」


「俺もだ光輝!
その様子じゃ凛、お前はいなさそうだな」


2人は嫌味な笑顔を浮かべて俺に話しかけてきた。

しかも、周りを見渡したらクラス中彼氏彼女でいっぱいだった。




おいおい、一体どうなってんだよ…




そんなことを思っていると隣の席から甲高い声がした。




「ええーーー!!!
な、なにそれ!聞いてないよー!」



「夏休み中に彼氏が出来たの、美鈴には言ってなったっけ?」



「言ってないよ!このみのバカ!」




この女の子は確か名前を 鈴原 美鈴 といった。

入学式の時、名前に”鈴”が2回も入ってるから妙に印象に残っていた。


顔は文句なしに可愛いくて
少し癖のあるふんわりとした髪型だった。



背丈は俺の方が少し高いくらいか?


『こんな子彼女に出来たら幸せだろうな』




そんな事を入学式の頃は思っていた。




「うそでしょ!!
夏休みの間にクラスのほとんどが付き合ってるだなんて!信じられないよー!」



どうやらこの子は俺と同じ境遇らしい。



そうだよな、夏休み明けて学校に行ったら
クラスのほとんどの人が付き合ってました?


どんな嫌がらせだよって……



美鈴ちゃんと仲良くなれそうだな、俺。



なんて考えてたら


「おい、凛!」


光輝が俺に話しかけてきた。


「んだよ」



「お前、美鈴ちゃんと付き合っちゃえよ」



その衝撃的な一言は教室中に響きわたった。



「はぁ!?!?」



俺は叫んでいた。


当たり前だろう、いきなりなんだと思ったよ。


しかし、あいにくクラスで付き合っていない男女は俺と美鈴ちゃんだけで、あいつらは丁度良いとでも思ったんだろう。



そんな光輝の言葉は当然、隣にいた美鈴ちゃんにも聞こえていた。



「え……?」



そんな一言をつぶやく美鈴ちゃんの顔は
当然のことながら真っ赤に染まっていた。


そんな顔すら可愛いと思った俺だった。



「お!顔が赤いよ?美鈴ちゃん!」

「凛いいやつだし、付き合っちゃえよ!」



光輝と優雅が美鈴ちゃんをからかう。


…いや、割と真面目だったのかもしれないが。


「え、そ、そんな。ちょっと」



顔を真っ赤にしながら彼女は必死に笑っていた。





……可愛い。





「お!凛が美鈴ちゃんに見とれてるぞ!!!」




なっ!




「え?」



その言葉に美鈴ちゃんは俺の方をその真っ赤な顔で向いた。



かぁぁぁ



自分でもわかるくらいあの時の俺は一瞬にして顔が赤くなった。



「おおおお!!!
凛もまんざらでもなさそうた!!」



そう言われた俺は恥ずかしくなって



「ふ、ふざけんな!誰がこんな女っ!!」



あっ!と俺は思ったけれど



気が付いたら俺はそう叫んでいた。




まわりの奴らはそんな俺の言葉なんか気にせず盛り上がっていたが、美鈴ちゃんだけは違った。



さっきの可愛らしい真っ赤な顔はどこかへ消え
かわりに今にも泣き出しそうな顔がそこにはあった。




やべ。




思ってもいなかった言葉を口にしたが
そこまで傷つくとは思っていなかった。




「み、美鈴…?」




そんな美鈴ちゃんに気が付いた、このみちゃんと言う子は美鈴ちゃんに声をかけていた。



すると彼女の口元に笑が浮かんだ。



「え…」



その直後だった。



「バッカじゃないの!
クラスのみんなに彼氏彼女がいるからって
その流れに任せて、好きでもない人と付き合うわけないじゃない」



だよなぁー!とか周りの男子はいう。


だが彼女は止まらなかった。



「こんなデリカシーもないチビ男子なんて
こっちから願い下げよ!」



俺の心にその言葉は突き刺さった。



美鈴ちゃんってこんな子だったのか……?




そして、現在もこんなやり取りは続いていた。