さゆりが亡くなって

何年目の結婚記念日になるだろうか・・・

聡はふとそれを考えることもあり

それほどに時が経つのも早い。

聡はその後、女性とは縁がなく

新しい恋人はおろか

恋をする余裕すらなかった。

せいも、

中学

高校と

相変わらず美咲とは縁があるのか

2人は小学校以来の

幼なじみ状態で美咲はせいの良き理解者となっていた。

「うわ・・・錆びてきたな」

聡はずっと指にはめた結婚指輪が

なんだか、輝きもなく

むしろ錆びてきて、濁っているのを感じていて・・・

外すことのないその指輪を

思い切って外してみた。

薬指は

その指輪の痕で

くっきりと

聡は手をかざし

その指を眺めていた。

目を閉じれば

なぜか芽衣のことを思い出す。

甘い恋人との時間と

この指輪の痕とが

相対していて

なんだかはがゆい。

芽衣が消えたかと思うと

さゆりの出産のことが浮かんできた。

2人で不妊に悩み

ようやくせいが産まれ

幸せだったあの頃。

あの頃のさゆりは

女性としても輝かしく

誇らしかった。

2人の女性を思い浮かべては

目を開けると

2人とも自分の前にはいない・・・

それでも

聡は、今

せいと

確実に年を重ねていた。

「2人とも好きだった・・・」

聡の本音も2人には届かず

芽衣は新しい人生を歩んでいた。

さゆりはひっそりと永眠し

男女はすれ違いながら・・・

各々の結末を迎える。

マリッジリングス

2人に指輪を渡すなんて

「こんな結末になるなんて・・・」と

後悔なのか

後悔じゃないのか・・・

聡は未だ・・答えが出せない。

ただ、真実の愛は

やはりひとつなんだと

さゆりへの想いは

色褪せることはなかった。