息子と2人で毎日を暮らす。

翌年の春

せいは小学校最後の年

6年生に進級し

生活は徐々に軌道に乗り出していた。

「父さんは先に行って・・・」

「うん。ありがとう。行ってきます。」

毎朝、聡を見送ってから自分も登校していた。

「おはよ」

「・・・うん・・・」

今年も美咲とは同じクラスになって

なにかとせいの世話を妬きたがる。

そんな姿に

最近クスりと笑ってしまうせいは

ようやく雪解けのように

心が少しずつ

ラクになってきていた。

夏も近づく頃には

さゆりの墓に行くのも

月に1度ぐらい

毎日行っていたのに

ずいぶんと間隔をあけるようになって

悲しみから

今では「安らかに」を願う

とても落ち着いた気持ちな自分がいた。

一方、聡は

さゆりの死から

また思い出したように

自分の薬指に

指輪をはめた。

「結婚してます」ってことを

わざと見せつけるかのような

その姿は

1部の女子社員からは

「奥さんと復縁したのに・・・奥さんが亡くなって・・・」と

痛々しく見えたが

聡は



心の底から、結婚の重さを

改めて感じ

「自分はさゆりの夫なんだ。」って

心は堂々と

スッキリしていった。

「ただいま・・・・」

聡は、早帰りの日は

必ずさゆりの眠る墓に寄る。

汗をダラダラと垂らしながら

水桶に水を汲み

墓参りを欠かさない。

「せいは責任もって育てます。」

そう、さゆりに誓った。

暑い夏の日射しは

燃えるように・・・聡の気持ちを試すようだった。