街は慌ただしいっていうのに

聡の心はいつまでも凍りついたまま・・・

「お父さん・・・」

さゆりが死んでから

せいもしびれを切らした。

あんなに意地を張っていたのに

今は、この父親と2人。

「行こ・・・」

今日もさゆりの墓へ2人で向かっていた。

葬儀は年末にさしかかり・・・

親戚やさゆりの同僚らをビックリとさせた。

「あの人が旦那さん・・・?」こそこそと皆が聡を噂する。

「せいちゃん・・・可哀そうに・・・」そんな声も聞こえていた。

「僕は・・・悲しくなんてない。」

せいはさゆりが死んでからもそう自分に言い聞かせていた。

学校でも、友達が心配する

「大丈夫だ・・・」

「大丈夫だ・・・」

そう思っていないと

自分が保てない。

「大丈夫~?」

「・・・ああ・・・」

同級生の美咲も心配してか

毎日せいに逢いに来た。

「なんかあったらうちに来て。」

そんな言葉がどんなに癒されるというのか・・・

せいはそれよりも

聡の傍を選んだ。

聡は

今でも手放せないものがある。

肌身離さずにそれを首にぶら下げた。

さゆりにあげた結婚10周年のマリッジリング

「あんなことさえなければ・・・」

そうだった・・・

「もっと、一緒にいろんなこと・・・」

過ぎた時間をこんなに惜しむなんて

自分でも驚くぐらい

悔しさでいたたまれなかった。