「小林さん・・・」

聡は、年度末で仕事も忙しい。

「ハイ。コレにお願いします。」

「なんだよ・・・今日もかよ。」

同じ部署の並木がお金を徴収しに来た。

忘年会シーズンで聡は夜も思うように帰れない。

「妻が・・・」っていう手も2回まで。

「息子が・・・」と言っても

「もう、小学生高学年でしょ。」って切り替えされる。

飲みたくない酒。

でも、働き盛りの自分に・・・

そして、また家族が今修復しようとしている。

聡は、懸命に社会人である自分を奮い立たせていた。

「最近・・・また行けてないな・・・」

おそらく、せいより断然、病院には寄れてない。

またさゆりの母に怒られるのか・・・と

週末はせいと一緒に病院へ行こうと決心していた。

「明日は休みだし・・・2次会行くか!」

「・・・ええ・・・まぁ・・」

断れない自分に悲しくも、

カラオケでは、いつしか恋人であった芽衣が好きだった歌を熱唱してしまっていた。

「ただいま」

誰も返事をしない我が家。

「もう、寝たか・・・」

聡は翌朝せいを連れて行くっていうのに

またリビングで深酒を。

ドアを静かに開けてせいはその姿を見ていた。

せいの目にはそれは「汚い姿」として映る。

起こす気にもなれず、再びドアを閉めた。

「あんなやつ・・・」せいは次の日の朝

一人早起きして病院へ向かった。

聡がきづいたのもお昼近く。

「やばい・・・」

慌てて病院へ向かった。

「なんだよ・・・せいのやつ・・・」

依然、親子の溝は埋まらなかった。