「もう、パパじゃないな。さすがに・・・」

「いや・・・」せいはうつむいたまま、でも聡を感じていた。

「お母さんが自宅にも帰れないからな。」

「ああ」

「おばあちゃんも、あまり来られないしな。」

「う・・・うん」

「俺・・・戻ってもいいかな・・・」

せいはなかなか答えてはくれなかった。

「あなた。私から・・・」さゆりは重い体を起こして、話をしようとするも、たどたどしい。

「とりあえず送っていくよ」聡はせいを自宅まで送った。

「また明日くるから」

「うん」

一度別れて・・・こうしてまた一緒に暮らす。

それが子供にとってどう理解されるのか?

聡は自信がなかった。

「本当にいいのかな・・・」

「あなたしかいないから・・・」

さゆりはすっかり衰弱している様子で

すがる思いで聡に頭を下げた。

「おまえには悪かった・・・」

「うん・・・いいの。もう」

せいのために、今、夫婦は復縁する。

聡は、芽衣ではなく

さゆりとせいを選んだ。

芽衣はいつからか察していた。

実家へ帰ってますます音信普通になっていた。


「一度逢いたい。」聡の申し出も断り

とうとう、自分から別れを切り出した。

「地元でお見合いするの。」

そんなメールを受け取ってから間もなくだった。

さゆりのガンの知らせを受けたのも。

「さゆり・・・」

今は、さゆりの支えになりたいと聡は、病室に通っていた。