「ごめんね。あなた・・・。」

病室にはさゆりがいた。

「大丈夫か?」

「うん・・・。」

別れた妻が、こうして頼るのは外の恋人ではなかった。

さゆりは過酷な労働と

こんな大事な時期に、

子宮がんを患い昨年から入院していた。

「せい・・・どうしよう?・・・」焦る気持ちに

さゆりは聡に連絡してしまった。

「お願い。」

「わかった」

これだけで、元夫婦は子供のために戻れる・・・?

あんなに強情だったさゆりの母も

勢いはなく、聡をすんなり受け入れた。

「母ちゃん・・・ただいま。」

そういって学校から毎日病室へ駆けてくるのは

せい。

久々にせいに対面する聡は

大人の男ながら・・・ビクビクしていた。

「せい。」

聡は病室にいたせいに声をかけた。

せいは・・・その面影に

ハッとするも

深々と頭を下げた。