朝から最悪だとは思ったけどまさか。

「柊君」

昼休み、隼人の話を聞きつつパンを食べていると聞き覚えのある声と共に肩をつつかれた。

「美鈴、どうしたの?」

ニヤけながら俺を見る隼人の視線を無視し振り返るとそこには幼馴染みが弁当を抱えて立っていた。

「ありゃ、もうお弁当食べちゃったかー」
「あれ、それ俺の?」
「うん。昨日お母さんに、柊くんのお母さんが出張らしいって言ったら柊君に持ってけって持たせられたの」
「パシリご苦労。お前の任務は完了した」
「こんな人の為にわさわざここまで来てやるだなんて私優しすぎる」

食べ盛りの男子高校生がパンで間に合うはずがなく。おばさんの好意に甘えて受け取り美鈴に礼を言おうとした時。

俺は忘れていた。



黒川隼人が、傍にいたことに。