スピカ ―記憶の欠片―





「あ」

私は思わず声を漏らした。


食事のために3人で部屋を移動し、ここにいる。

目の前のテーブルにはたくさんの料理。


そのテーブルの椅子に、あの少年は座っていた。



「さっきの……!」

「あら、もう知り合いだったの? 今、この病院に入院しているのはあなたとこの子の2人だけなの。仲良くしてね」



……本気で髪を引っ張ったこの人と、どう仲良くすればいいんだろう。


「ヒノくん、お皿とってくれる?」
「どうぞ」

「あ、あとお箸新しいのだしてちょうだい」

「これでいいですか?」


ヒノ、という名前らしい。

最後に言ったあの言葉は、私の質問に対する答えだったようだ。



「いただきます」


声をそろえる。

後は、山盛りになった大皿から好きなものをとって食べていく。

さすが病院。バランスの良さそう食事だ。


「おいしいです!」

「そうかいそうかい。これらは全てマリさんが作っているんじゃぞ」

「マリさん、料理がお上手なんですね」

「そんなことないわよ。満足してもらえたならうれしいわ」


感嘆の声しか出てこない。

こんなに美味しい野菜炒め、他にあるだろうか。


もうずっと食べていたいほどだ。