スピカ ―記憶の欠片―


何故、窓枠に腰かけているのだ。

近くに椅子があるのだから、それに座ればいいだろうに。


少年はじっと私を見つめる。

真っ直ぐすぎて、視線が痛かった。


……この静けさが痛々しい。

ついに沈黙に耐えられなくなった私は、自分から話しかけてみた。



「あの」

「…………」

「あのー」

「…………」


話しかけても、返事が返ってこない。


気まずくて仕方がなかった。


身体を動かそうともせず、ただ黙って私を見ている。

人形のようだ。



私ぐらいの歳の少年で、茶色い髪が潮風に揺れる。


髪と同じ色をした瞳は美しく、吸い込まれそうだ。

射抜くような目、白くて透明感のある肌。



何もかもが、同じ人間なのかと疑ってしまうほど、美しいと思った。



差し込む太陽が、彼を照らし出す。

どこかの絵画に描かれていそうな、幻想的な光景だ。




そんな彼は、ようやく身体を動かした。

少年は窓枠から軽やかにおり、こっちに向かってくる。


一歩一歩に重みさえ感じてしまう少年の足取りに、私は反射的に足を後ろにひく。

彼は私の近くまで来て、ゆっくり腕を伸ばす。



そして、少年は私の髪を思い切り引っ張った。



……繰り返そう。

少年は私の髪を思い切り引っ張った。



「いっ!?」

「なに? おまえがなんか逃げようとしてたから」

「痛い痛い!」



手加減なんてない。本気で私の髪が抜ける!

離せ私の髪、返せ私の髪!



少年はため息をついて、私の髪から手を離す。


それを見た私は、瞬時に彼との距離をとった。

慌てて構え、警戒レベルを強にした。


「何だよ、さっきから」

「だ、だって、いきなり!」

「あぁ、それ以上俺から離れてみろ、次は攻撃するぞ」



さっきのは、攻撃に入らないの!? 

そんな疑問を浮かべながらも、結局動けない私だ。