スピカ ―記憶の欠片―



波の音がする。

鼻には潮風の香り。



私はゆっくりと瞼を開けた。



ずいぶんと長い間、眠っていたような気がする。

頭の中で何かがガンガンと響く。



寝すぎだ。

身体が怠い。


起き上がるのが辛くて、数回瞬きをしてみる。




「先生! 目が覚めたようです!」

「おお! どれどれ……」



横にいた2人が、私の顔を覗き込む。 

誰だろう、この人たちは。


……白衣を着ているところから見て、医者なのだろうが。



「わたし……」


どうして、こんなところにいるの?

たしか、私は。



――――あれ? 何してたんだっけ。



思い出せない。



「良かった、良かった。目を覚まさんかったら、どうしようかと……」


おじいちゃん先生が、にっこりと笑う。

テンションが上がったらしく、隣の若い女の人とハイタッチをしていた。


状況がいまいちつかめない。いや、全くついていけていない。



「あの」

「さぁさぁ、もう少し寝てなさい。もう大丈夫じゃろう」

「えっと……」

「マリさん、隣の部屋の子を見てやってくれ。わしもすぐに行く」

「あ、あの!」


さくさく話を進めていくおじいちゃん先生に、私は大声を出す。


おじいちゃん先生も、扉の前にいた若い女の先生も、固まっている。

驚かせてしまった。


でも、出さずにはいられなかった。

このままだと、2人ともどこかへいってしまう。


聞かなきゃ、今聞かなきゃ。



「ここは、どこですか?」

部屋をぐるりと見回す。

小さな部屋。病室の可能性が高い。



白い部屋で、小さな窓からは海が見える。

さっきからの波の音と潮風はこれか。