「……スピカだ」
「は?」
「だから、おまえの名前。おまえの指差した星の名前にしようと思ったんだよ」
――――スピカ。
響きのいい名前。
違和感もなく、すっと私の耳に入ってくる。
ずっと前から、知っていたような。そんな雰囲気。
「って、ちょっと待って! 今の語りって完全フラグ! 第一、私が名前にしてもおかしくなさそうな星を指したからよかったものの、厳つそうな星だったらどうするつもりだったの!?」
「だったら、その名前にするつもりだった。例えばアンタレスとか」
「やめて! 決め方が雑だよ!」
「いいだろ、ふつーの名前になったんだから。ごちゃごちゃうるさい」
「そりゃ、自分の名前だよ!? うるさくも言うよ!」
叫び疲れて、私は息を吐く。
だめだ、勝てる気がしない。
「スピカ」
「……何?」
「馬鹿だよ、おまえは」
ヒノは一瞬だけこっちを見て、またどこかへ行ってしまった。
多分、病院に戻るのだろう。
私はしばらく動けなかった。
固まったまま、ヒノの背中を見る。
だって、あんまりにも――――。
私を見る目が、愛おしかったから。
