スピカ ―記憶の欠片―



寄せては返す波。星の明かりだけが頼りの病院の外。


彼は何を思ってそこにいるのだろう。

懐かしむような、それでいて悲しそうな表情でじっと海を見ていた。



「おい、そこにいんだろ。来いよ」


少年は海から視線を外すことなく、私に声をかける。

いつから気づいていたのだ。


――――どこを見ているのだろう。

見ているのは海じゃない。海のもっともっと向こうの……本土の方。


浜辺に座る彼の横に腰を下ろす。

私が提供できるホットな話題などないが、ただ黙っているのは気まずくて、私は彼の名を呼ぶ。


「ヒノ……さん?」

「ヒノでいい」

「ヒノくん?」

「……ヒノでいいって言ってるだろーが。なんか気持ち悪い」


言い方をもう少し柔らかくできないのか。

イラつきが止まらない。


「おまえ、どれでもいいから星を指さしてみろよ」

「えっと、どういうこと?」

「さっさとしろ」

「じゃ、じゃあ……あれ」


言われるがままに、空にちりばめられた星を指さす。

空に輝く、ひときわ明るい星。


一体、何だというのだ。