空いている方の手で涙をそっと拭う。
安積は夢でうなされているのだろうか。
とりあえず起こそうと身体を揺さぶろうとした。
その瞬間。
「ごめんね尾崎君。
苦しそうにしてるけど寝かせといて。
手は繋いだままでいいから」
はっと後ろを向くとさっき帰ったはずの有岡がいた。
「用事は終わったのか?」
「うん。ヤボ用だったし潰してきた。
ごめんね?尾崎君。
もう夜遅いし帰る?」
時計をみると21時を回っていた。
でも、俺の家はラッキーなことに今日は誰も帰らない。
「いや。俺も看病手伝うよ。
それにこの手離すのちょっと難しそうだしね。」
安積にがっちり掴まれた手を見せて笑った。
「ありがとね。
香奈に気をつかってくれて。」
「なんかあったんだろ。こいつ。」
すると有岡は口を閉じた
「大丈夫。別に俺は話せって脅したりしねーし、話されるのは安積の口からがいい。」
そう言うと有岡は笑って見せた。
「そーかそーか。
そんなに香奈を大事に思ってくれてるのか。」
そう言われると照れてしまうが実際そうだ。
「ありゃ?尾崎颯さん?
顔が少し赤いですわよ」
そう言われて思わず顔を触った。
「微笑ましいわ。」
そう笑う有岡。
「自分でも自覚したばっかなんだからそんなにゆーな有岡。」
そう。きっと俺はこいつが。
安積香奈が好きなんだ。

