二学期が終わるとすぐにクリスマスが来る。
クリスマスはどうやらキリストの誕生日ではないらしい。

聖書にも書かれていないようなのだけど、イタリアの太陽の復活祭が起源らしい。
つまり冬至ってこと。


ローマ時代にキリスト教を広める目的で、この日が選ばれたそうだ。
困難を窮める布教のためにその地域の行事と合体したようだ。


キリストの本当の誕生日はどうやら十月辺りらしい。
でも、生まれよりも亡くなった日の方が重要なのだそうだ。
つまり十三日の金曜日ってことになるのだろうか?




 恋人達は、愛の証を求めて翻弄する。
例の三人も例外ではなかった。

ホテルのディナーの後、スイートルームをリザーブしたかった。

でも、そんな余裕も度胸も無い三人。
まして正樹を抜きにして、このラブバトルに決着なんてつけられないから。


それで結局、何時もの通り家で過ごすことになる。

美紀の手料理で、家族水入らずで……
でも、公平をきすために正樹の発案で、大も仲間に加わることになった。


正樹は既に……
諦めていた。
いくら美紀が好きでも、珠希の代わりにしてはいけないと思っていたのだ。
だからそんな提案をしたのだった。

正樹は大に賭けていた。

大と美紀の結婚。
本当は、それが一番だと思っていたのだった。




 珠希直伝の料理がローテーブルに並ぶ。

襖も開け放たれていた。

珠希の仏間であるこの部屋は、夫婦が年老いた時の寝室用だった。
珠希は其処まで考えていたのだった。
まさか自分の居処になるなんて思いもよらなかったはずなのだ。


珠希も一緒に輪の中に入ってほしいと願って美紀は戸を外したのだった。


陰膳も何時ものように用意した。


「これ何?」
何も知らない大が聞く。


「ママの分だよ」
秀樹と直樹がハモる。


「流石双子だ」
大はそう言った後寡黙になった。


(原因はこれか?)
そう思った。


大は、五年前に亡くなった珠希のことを詳しくは知らない。
でも美紀の心に魂に深い傷を負わせているのではないかと感じていたのだ。




 「可哀想だとは思わないのか?」
大は二人の部屋に入ってすぐに切り出した。


「俺達の母親代わりだって言うことか?」
秀樹の質問に大はただ頷いた。
でも本当の意味は違っていた。


「美紀は知っているんだと思うんだ」

秀樹はそう前置きしながら、珠希のラケットが美紀の手元に残った経緯を語り始めた。