今日は地区予選最終日。

これに勝てば、いよいよ甲子園の舞台。

秀樹と直樹の夢が後一歩に近付いていた。




 秀樹の豪速球は地元の話題になっていた。
全国区の新聞記事にも取り上げられる程だった。

でもそれには別の意図もあった。


――元プロレスラー・平成の小影虎の息子――

タイトルは全てそれだった。


秀樹も直樹も正樹とは違い長身で格好いい。
当然ファンも増大する。

勿論、正樹ファンも見逃さなかった。

そう……
沙耶にお見合いを頼んだ人のように、正樹ファンも虎視眈々とチャンスを狙っていたのだった。


一躍人気者となった秀樹と直樹。

でも二人は、美紀一辺倒だった。
他の人には目もくれないで、真っ直ぐに美紀だけを見つめ続けていた。


二人の親友と位置付けられた大も同じだった。

一分の望みをかけて三者三様の恋愛バトルを繰り返していた。


休戦協定は守られてはいた。
それでも、自分の存在をアピールしたかった。

その全てが、次の一戦にかかっていたのだ。




 地方予選の優勝決定戦は最終回を迎えいた。

九回の裏、二死満塁。

秀樹は自信を失いかけていた。
地方の投手の中で最強だと言われていた秀樹。
それはツーシームがあったからだった。
それがいとも簡単に打たれたのだ。
秀樹は研究され尽くしていた。
それは、目立ちたがり屋の盲点だった。
秀樹は自分の投球に自信を持ち過ぎていたのだった。

がっくり肩を落とした秀樹には、余裕の表情も消え失せていた。


勝つにはホームランしか有り得なかった。


一打逆転。
願ってもないのチャンスだった。


そして、バッターはキャプテン直樹。
秀樹は祈るような思いで直樹を見入っていた。