後衛がボレーを出し、練習が始まる。
三球を五回。
そしてスマッシュに繋げる。

三球の内訳は中ロブ、繋ぎのロブ、そしてスマッシュ攻撃だ。
なるべく全員がコートを使う工夫。
キャプテン美紀の真価が問われることも承知の上で采配を決意したのだった。


それは珠希の影響をことごとく受けてきた美紀ならではの素質だった。
それでも美紀はもっと上を目指そうと思った。
珠希の夢を自分の夢とするためにも。


珠希の夢は国民体育大会で県代表として出場すること。
でも一番は……
正樹に愛されることだった。




 ソフトテニスの練習方法は美紀が中心となって決めていた。

国体の選手だった珠希の工夫を学ぼうと言う提案があったからだった。

でも美紀はでしゃばるのが嫌いで、何時も部員達に気を配っていた。

部員の誰もがそのことを知っていた。
だからこそ美紀は、部員達に頼りにされていたのだった。


珠希は練習過程を六通りに分けていた。

運動に関わる神経伝達を素早く行えるようにするコーディネーション。

相手のショットに素早く反応するために必要不可欠なフットワーク。

狙った場所へボールを打つためのショット技術向上。

試合を組み立てるために必要なストローク。

得点のチャンスを生かすネットプレー。

基本中の基本サーブ。

それらを一つ一つこなした後で総合練習となる。


サーブはボールを二つだけ持つ。
試合形式でリターンを狙わせる。
その処理練習が技術向上へと繋がると美紀も思っていた。




 午後の練習はまずロードから始まる。

野球の練習グランドのフェンスの先には川が流れていた。

この川の橋から橋まで一周する。

クールダウンとウォーミングアップ後、それぞれの練習メニューをこなす。



レギュラー陣はまずはコート打ち。

コート一面がそのために用意されていた。
残りのコートは下級生用の練習に使用する。


でも大会が近い時は、全コートが出場選手用になる。


クロスとミドルを10周中4球以上入れること。

前衛を立てて取れないコースを狙う。

前衛が得意な選手か後衛がボール出して、ボレー、スマッシュの練習。

中ロブ。
繋ぎロブ攻撃。
シュートなど。
朝練と同じ練習方法だったが、これが一番良いと美紀は感じていた。
その他にも遣らなくてはいけないことが満載だった。