今日は三月二十六日。
私が大阪に来て、五日が過ぎようとしていた。
朝散歩中、蟷螂(かまきり)の卵を見つけた。
実は私は蟷螂が大嫌い。
それは小学生の頃の出来事だった。
パタパタ音がして、私の頭に何かが止まった。
何だろうと思いながら、それを手で追い払った。
するとそれは又パタパタと飛んで、今度は私の胸に止まった。
恐る恐る其処を見ると、三角顔の蟷螂がカマを振り上げ私を威嚇していた。
私は悲鳴を上げた。
すぐに駆け付けてきた人によってそれは取り除かれたが、それ以来全くダメになってしまったのだった。
蝉やカブトムシなどは平気で触れるのに。
でもお父さんが亡くなる前に教えてくれたんだ。
特に蝉は人間の体温に弱いんだって。
触られるとすぐ死んでしまうらしいんだ。
だから私それ以来、触らなくなったんだ。
でも、授業で知った蟷螂の実態。
本当に怖いのは蟷螂より蟻だったんだ。
五月の半ば頃、蟷螂は産まれる。
固まった泡のような卵から、小さな命が這い出して来る。
一斉に割れる訳ではなく、一つの場所から出て来るのだ。
彼等には最初から試練が待ち受けている。
地面にそれを待ち兼ねていた蟻がたむろしていたのだ。
それを知らない蟷螂達は次々と後を付いて降りて来るのだ。
蟻に襲われた蟷螂達に逃げ場はない。
彼等の中で生き残れるのは僅かに一、二匹だと言う。
私はその事実を知った時、初めて昆虫の世界の厳しさが解ったような気がしていた。
私は蟷螂の卵を育ててみたくなった。
大嫌いなはずの蟷螂を。
(違う、何時もの私じゃない!)
私は私の中に得体の知れない物を感じ始めていた。
私は取ってきた蟷螂の卵を小さな箱に入れ、パティオに置いた。
今日から此処で観察だ。
(よし、これで蟻から守れる)
何故だか納得している自分がいる。
本当におかしい。
だって私は蟷螂が大嫌いなのだから。
(でも蟷螂は農作物を荒らす昆虫を食べてくれるんだよね……)
何故か、そんな考えが脳裏を過った。
「あっ、そう言うことか?」
(えっ、どういうこと?)
頭の中では密かにバトル。
でも私はこの状況を全く理解していなかった。
私が大阪に来て、五日が過ぎようとしていた。
朝散歩中、蟷螂(かまきり)の卵を見つけた。
実は私は蟷螂が大嫌い。
それは小学生の頃の出来事だった。
パタパタ音がして、私の頭に何かが止まった。
何だろうと思いながら、それを手で追い払った。
するとそれは又パタパタと飛んで、今度は私の胸に止まった。
恐る恐る其処を見ると、三角顔の蟷螂がカマを振り上げ私を威嚇していた。
私は悲鳴を上げた。
すぐに駆け付けてきた人によってそれは取り除かれたが、それ以来全くダメになってしまったのだった。
蝉やカブトムシなどは平気で触れるのに。
でもお父さんが亡くなる前に教えてくれたんだ。
特に蝉は人間の体温に弱いんだって。
触られるとすぐ死んでしまうらしいんだ。
だから私それ以来、触らなくなったんだ。
でも、授業で知った蟷螂の実態。
本当に怖いのは蟷螂より蟻だったんだ。
五月の半ば頃、蟷螂は産まれる。
固まった泡のような卵から、小さな命が這い出して来る。
一斉に割れる訳ではなく、一つの場所から出て来るのだ。
彼等には最初から試練が待ち受けている。
地面にそれを待ち兼ねていた蟻がたむろしていたのだ。
それを知らない蟷螂達は次々と後を付いて降りて来るのだ。
蟻に襲われた蟷螂達に逃げ場はない。
彼等の中で生き残れるのは僅かに一、二匹だと言う。
私はその事実を知った時、初めて昆虫の世界の厳しさが解ったような気がしていた。
私は蟷螂の卵を育ててみたくなった。
大嫌いなはずの蟷螂を。
(違う、何時もの私じゃない!)
私は私の中に得体の知れない物を感じ始めていた。
私は取ってきた蟷螂の卵を小さな箱に入れ、パティオに置いた。
今日から此処で観察だ。
(よし、これで蟻から守れる)
何故だか納得している自分がいる。
本当におかしい。
だって私は蟷螂が大嫌いなのだから。
(でも蟷螂は農作物を荒らす昆虫を食べてくれるんだよね……)
何故か、そんな考えが脳裏を過った。
「あっ、そう言うことか?」
(えっ、どういうこと?)
頭の中では密かにバトル。
でも私はこの状況を全く理解していなかった。