「昨日は結局、部屋割りだけしてベッドは使わなかったんだ。みんなで外で話し合っていたから」


「外に何かあるの?」


「いや、ただ家で弁当が食べ辛かったんだ。汚すといけないかな? みたいになって……」


「あら、でもさっき引っ越し蕎麦食べたけど」


「あ、あれは中村さんが居たからだよ」

それがどんな意味か判らないけど、気を遣ってくれたのだと素直に思った。


(優しいんだね直樹君。でも確か誰にでもそうだったか?)
私は、生徒会長としてみんなを率先していた直樹の姿に惚れ込んだ。

でもそれだけじゃない。
優しくて、気を配る人だから好きになっのだ。




 何だか判らないけど、直樹君の寝袋に興味がわいた。


「直樹君……良かったら、寝袋見せてくれる?」


「うん、いいよ」

直樹君の声が嬉しくて泣きそうになった。


ベッドから這い出すと、とりあえずメーキングだけはした。

へんちょこりんな形だけど仕方ない。

私は又も開き直った。


寝袋の置いてある場所へ移動中に、スポーツバッグの取っ手に足を引っ掛けた。


(ヤバい、転がる)

そう思ったのも束の間。

私は勢い余って寝袋の中に頭から突っ込んでいた。




 気が付くと私は直樹君の寝袋の中にいた。
軽い目眩を起こしたようだ。

ってゆうか……
みっともなくて、すぐには立ち上がれなかったんだ。


直樹君が寝袋のチャックを開けていたから顔が足の部分にあった。


「ア、ハハハハ……』
私は又笑い始めた。

寝袋の中の直樹君の匂いが私を包む。

その途端に私は急に我に戻り、慌てて這い出した。


横を見ると直樹君が心配そうに私を見ていた。


「大丈夫中村さん?」
その声は確かに優しい。
でも心なしか笑っているように見えた。


直樹君は私を起こして、ベッドまで連れていってくれた。

私はどうすることも出来ずに、又上掛けを捲った。


私は大きなベッドの上で小さく寝返りを打った。

まるで上掛けに縛られているようで、体の自由が利かないからだった。