私は直樹君の部屋にあるキングサイズのベッドに潜り込もうとした。

真四角に近いベッドの縁は綺麗に折り畳まれていた。

だから上掛けを捲るだけで大変だった。

体を半分入れただけで疲れてしまった。


「ベッドメイキング大変だったでしょう?」

私は傍で寝袋の準備をしている直樹君に向かって声を掛けた。


「ううん。やり方解んないから結局使わなかったんだ」

直樹君は不思議なことを言った。


「それじゃ夕べは何処で眠ったのですか?」

私は返事を聞きたくて直樹を見つめた。


何だか判らないけど、私結構大胆になっている。
本当は相当シャイなんだけどね。




 「昨日は結局、部屋割りだけしてベッドは使わなかったんだ。みんなで外で話し合っていたから」


「外に何かあるの?」


「いや、ただ家で弁当が食べ辛かったんだ。汚すといけないかな? みたいになって……」


「あら、でもさっき引っ越し蕎麦食べたけど」


「あ、あれは中村さんが居たからだよ」

それがどんな意味か判らないけど、気を遣ってくれたのだと素直に思った。


(優しいんだね直樹君。でも確か誰にでもそうだったか?)
私は、生徒会長としてみんなを率先していた直樹の姿に惚れ込んだ。

でもそれだけじゃない。
優しくて、気を配る人だから好きになっのだ。




 「それじゃ、一体何時その頭にしたの?」


「した。と言うのか、されと言うの……」

直樹は煮え切らなかった。


「大がふざけてビールを頭に掛けたんだ。いや、飲んではいないよ。ただ前夜祭的にビール掛けが始まったんだ」

その時頭の中で、大君がビール瓶を片手に直樹君を追い回す姿を想像した。

私はそれだけで楽しくなってきた。


(でも一体何処からビールを持って来たの? この頃何処でも、未成年にアルコール類は売らないはずなのに……)


「ふっ、もう優勝気分ですか?」
それでも私は何故か急に笑いたくなった。