高級住宅地ではないが、少し高台にある長尾家。

小規模開発地区の名残の建て売り住宅もあったが、注文住宅も存在する地域だった。

傍に地域最大の病院が建設されることが決まって、それに伴って整備された既存宅地だったからだ。


長尾家は注文住宅を中古で買って、生活していた。


山と言うより丘に近い。

それゆえ朝は楽なのだ。
坂道を一気に下ることが出来るから。
その地形は、朝練で体力を使う兄弟には嬉しいことだった。
温存したパワーは、そのまま練習成果に繋がる。

比較的近場に高校があったことと、其処へ入れる学力を付けてくれた両親。


特別な進学塾に行かせた訳ではない。
自宅学習で充分だと思った珠希が、自力で探した教材で楽しみながら身に付く方法を駆使したからだった。

予習復習が基本だった。
それは、授業が理解出来ることが一番だと判断した珠希の知恵だった。


美紀はそんな珠希に何時も感謝しながら、ペダルを漕いでいた。


帰りはこの坂道が、体力アップになる。
この素晴らしい環境は、兄弟達を成長させるために存在していたのだった。
だから珠希は此処を選んだのだった。




 風水の本を示して、妹の沙耶が反対した。

でもどんな理由を付けられても、珠希は此処が気に入っていた。


花火だけではない。
メインストリートからちょっと入っただけなのに、静かな環境。


その上、家族が成長出来る要素が此処には溢れていたのだ。


どんなに云われても曲げない精神。
それは、兄弟達を思えばこそだった。


中古住宅。
オマケに鬼門の玄関。
確かに気にはなる。

だから、玄関に白い花と盛り塩を置いたのだった。


その厄除け方法を美紀は受け継いだ。

朝の恒例の行事となったのだった。


一般的に風水では金銭面では西に黄色。
健康面では、東に赤とされている。
余り裕福ではない長尾家。
洗濯物を干す時はこれを取り入れていた。