市の体育館の中に無料ジムがあった。

一度器具の取り扱い講習を受けるとカードが発行され、何時でも自由に使用出来た。


二人は早速一緒に講習会に出席後、トレーニングを開始した。


柔軟体操。
トレーニングマシン。
ランニングマシン。
それらを一緒に行う。
苦痛であるはずの強化メニューを、楽しみの道具に変える二人。


二人は二人で励まし合うことでお互いの体を鍛えようとしていたのだった。


この施設にあるのは、レッグプレスマシンやラットマシンなどの筋肉強化種。
ドレッドミルやエアロバイクのような有酸素運動系種。
休んだり柔軟体操なども出来るマットも常設されていた。

至れり尽くせりの品揃えで無料なのだ。
珠希はそれが嬉しくてならなかった。


正樹はマットの上で、受け身の練習を欠かせなかった。


「プロレスやるには柔道が一番よ。でも寝技足技の前に受け身をしっかり身に付けなくちゃね」

珠希の言葉を何でも受け入れ、それ故に成長し続けた正樹。

やはり正樹にとて珠希は勝利の女神だったのだ。




 二人のデートコースは決まってその施設だった。

それだけ珠希は正樹の筋肉作りに邁進したことになる。


珠希はエクササイズの本を図書室で借りて読みあさり、正樹だけではなく自分の筋肉も強化したのだった。


珠希と一緒に居られることで成長する正樹。
高校を卒業する頃には、すっかりプロレスラーの体が出来上がっていたのだった。

柔道は高校での体育授業で必須科目だったので胴着は既にあったのだ。

なるべくお金かけたくないと思う珠希らしい発想だった。

だから正樹はどんどん力を着けていけたのだった。


「珠希は一生懸命だった。だからそれに報いるために頑張った。こんな小さな体でプロレスラーになれたんだ」

正樹は又泣いていた。


「こんないい加減な奴が美紀を好きになっても良いのだろうか?」


「何処が?」
沙耶はやっと笑った。