大切なものから人は無くしていくという。 俺の大切なものは、とうの昔に無くした。 千景の頬を撫でながら、ふとその昔を思い出した。 大好きだった家族。 愛していた、父親も母親も。 あの日までは確かに。 頭の片隅にあった残像を振り払うように頭を振った。 忘れろ。 もう忘れてしまえ。