目を開けると、毎朝歩いていたコンクリートの道があった。


(…今までのは、)


夢、だったのだろうか。
場所も服装も、あの日のままで。
スクールバッグに着けている時計も、あの日と同じ時間を刻んでいた。

学校に遅れてしまう。

一歩、踏み出したとき、胸元で何かが揺れた。


「っ、これ、」


長門さんのお守りだ。


(そうだ。夢なんかじゃ、ない。)


全部、現実。
時を越えてしまった理由も、あんなに長くあちらにいたのに、こちらでは時間が進んでいない理由も分からないけど、それでも、現実なんだ。


「長門さん…、長門さんっ、」


長門さんの気持ちは分からないまま。
キスの意味も。