ありがとうのその前に





『琴音?』



あたしはその場にはいたくなくて…二人を見たくなくてその場から走り出していた





あたしの頬を伝っているのは雨?それとも涙?



きっとどっちもだろうけどグチャグチャでわかんない





腕を強い力で引っ張られた




『待てって!』


『離して…』


『泣いてるのか?』




ここであたしが泣いてるがバレたら翔吾の幸せを壊しちゃう…




とっさに思ったあたしは翔吾の腕を振りほどいた





あたしは無我夢中で走った




なにもかも振り切るために…





あたし間違ってたんだ




やっぱりこの気持ちは封印すべきだったんだ




あたしに翔吾の幸せを壊す資格なんてない





『琴ちゃん!ビチョビチョ大丈夫…?』


『琴音?こんなに濡れて…シャワー浴びてきなさい!』




家に戻るとヒロと帰ってきた母が迎えてくれた



『頭がボ~ってする…疲れた…』




あたしは重たい体を引きずりながらベッドに入った



もう何も考えたくない