ありがとうのその前に




家に帰ると雨が降り出していた



『わぁ~ぎりぎりセーフだったねヒロ!』


『ほんとだぁ♪危ない危ない♪』




そんなやり取りをしながらあたしは夕飯の準備をしていた




『あ!味噌きらしてたんだ!買ってくるからヒロお留守番してて!』





ヒロにお留守番を頼んであたしは近くのスーパーまで走った




無事に味噌を買えたあたしは、水溜まりを避けながら来た道を歩いていた





次の瞬間あたしは味噌汁をしようとしたことに後悔した






あたしの目線の先には幸せそうな二人




二人で一つの傘に入って笑っている翔吾と真由美先生






わかっている事だけどやっぱり実際に目にすると辛い




やっぱりダメだよね…




その笑顔を壊すかもしれないことはしたくない…




翔吾の幸せを祈るって思ってたじゃん…





『…見たくなかったな…やっぱキツイや…』



あたしは力が抜けて傘を落とした





その音に気付いた翔吾があたしを見た