「いいな。こういうの・・」

「彩夏、好きやったもんなあ。
 こんな風にプラトニックにいちゃいちゃするのが」

「雅也はフィジカルなのが好きだったけどね」


健全な男子たるもの当然や、と肩で私を押した。


「でも ホントに好きだったな。
こんな風に雅也と一緒に居るのが」



昔と変わらない雅也の逞しい肩に
昔と同じように私は頭を凭せ掛けると
大きなため息を落とした雅也が低く呟いた。



「お前なあ・・・
 それじゃまるで俺に未練があって
 それで成瀬と別れたみたいに聞こえるで??」

「そうかもしれない」

「アホ。そんな冗談、嘘でも言うたらあかん」

「冗談でも嘘でもないって言ったら?」

「シャレにならんわ」

「本気よ?私」


雅也の肩に凭せ掛けていた頭を戻して
私は彼の横顔を見つめた。


「もうええから」

「よくない!私が本当に好きなのは・・・」

「彩夏!」


ピシャリと放った雅也の一言が
甘くなりかけていた雰囲気を霧散させた。



「いい加減にしてくれへんか?そんなん今更やろう?」

「うん、分かってる」

「あのな 自惚れるのもたいがいにしいや?
 俺が今でもお前のこと好きでいると思ったら大間違いやで?」

「そんなことは思ってない」

「俺、つき合うてる女、おるしな」



そうだろう。当然だ。
雅也ほどの人なら、女性の方が放っておかない。
「うん」と答えて私は立ち上がった。