私達が偽りの恋人同士を装うことになったのは去年の秋の終り頃。
言葉のあやとでも言おうか。成り行きとでも言うのか。
当時、勇人は生徒会の会長で私は会計だった。
我が校の生徒会は会長のみ選挙で選ばれる。
会長についてのみ前期は3年生、後期は2年生が担い
男女どちらでも構わないし、自薦他薦も問わず再選も妨げないという条件がある。
その他の3役は立候補者と、前任者や一般生徒から推薦された者の中から
前年度役員と新会長とで決める。
勇人は人物的にも学力的にも申し分ないし
バスケ部を全国大会に導いた立役者でもある。
前会長からの推薦で候補に挙がった。誰もが納得の人選だった。
そして、その勇人の会長推薦で私は会計をすることになった。
理由はクラスが同じで何かと都合がいいからということだった。
突き詰めて言えば、4役を据える組織というのは
会長と会計がいれば事が足りる。
2年生の秋以降といえば、部活では主戦力だ。
しかも勇人の居るバスケ部は強豪。
生徒会より部活に重きを置きたい気持ちがあるのも当然だ。
クラスや学年が違えば連絡ひとつするにも面倒だ。
その辺りの利害計算をして、同じクラスである私に
白羽の矢を立てたのだろうが・・・
正直なところ、疑問だった。
そういうことなら私よりももっと適任者がいるのではないかと
勇人に尋ねたのは言うまでもない。
すると勇人は真っ直ぐな視線に私を捉えて言った。
「気安く話せて信頼できる女子は藤崎くらいだからな」
臆面なくさらりと言われて鼓動が小さく跳ねた。
それが甘やかな疼きとなって胸を満たしていく感覚は
初めてで、心地よいような照れくさいような
何とも言えない不思議な感覚だった。
その感覚にぼうっとしたまま、私はまた尋ねた。
「それなら・・・男子のほうがいいんじゃないの?」
「役員が男ばかりじゃ意見が偏るだろ。
誰か女子で適任者を、と言われたらお前しか思いつかなかった」
もうこれ以上は何も言えなかった。勇人が私を思いついたのは
適任者としてだとわかっている。わかっていたけど・・・
それだけじゃないかもしれないという
都合のいい期待を抱かずには居れない胸が
ときめくのを抑えきれなかった。
「私でいいなら」
俯き加減になってしまったのは勇人の顔を直視できなかったからだ。
あぁ良かった、と小さく呟いた勇人は「よろしく」と私の肩を軽く叩いた。
言葉のあやとでも言おうか。成り行きとでも言うのか。
当時、勇人は生徒会の会長で私は会計だった。
我が校の生徒会は会長のみ選挙で選ばれる。
会長についてのみ前期は3年生、後期は2年生が担い
男女どちらでも構わないし、自薦他薦も問わず再選も妨げないという条件がある。
その他の3役は立候補者と、前任者や一般生徒から推薦された者の中から
前年度役員と新会長とで決める。
勇人は人物的にも学力的にも申し分ないし
バスケ部を全国大会に導いた立役者でもある。
前会長からの推薦で候補に挙がった。誰もが納得の人選だった。
そして、その勇人の会長推薦で私は会計をすることになった。
理由はクラスが同じで何かと都合がいいからということだった。
突き詰めて言えば、4役を据える組織というのは
会長と会計がいれば事が足りる。
2年生の秋以降といえば、部活では主戦力だ。
しかも勇人の居るバスケ部は強豪。
生徒会より部活に重きを置きたい気持ちがあるのも当然だ。
クラスや学年が違えば連絡ひとつするにも面倒だ。
その辺りの利害計算をして、同じクラスである私に
白羽の矢を立てたのだろうが・・・
正直なところ、疑問だった。
そういうことなら私よりももっと適任者がいるのではないかと
勇人に尋ねたのは言うまでもない。
すると勇人は真っ直ぐな視線に私を捉えて言った。
「気安く話せて信頼できる女子は藤崎くらいだからな」
臆面なくさらりと言われて鼓動が小さく跳ねた。
それが甘やかな疼きとなって胸を満たしていく感覚は
初めてで、心地よいような照れくさいような
何とも言えない不思議な感覚だった。
その感覚にぼうっとしたまま、私はまた尋ねた。
「それなら・・・男子のほうがいいんじゃないの?」
「役員が男ばかりじゃ意見が偏るだろ。
誰か女子で適任者を、と言われたらお前しか思いつかなかった」
もうこれ以上は何も言えなかった。勇人が私を思いついたのは
適任者としてだとわかっている。わかっていたけど・・・
それだけじゃないかもしれないという
都合のいい期待を抱かずには居れない胸が
ときめくのを抑えきれなかった。
「私でいいなら」
俯き加減になってしまったのは勇人の顔を直視できなかったからだ。
あぁ良かった、と小さく呟いた勇人は「よろしく」と私の肩を軽く叩いた。

