プラスティック・ラブ

「宿泊?ここに、ですか?」
「そうよ。ここに、よ」
「どうして…!」
「そりゃ、本人がそうしたいんでしょう?」


レセプションに参加する何人かがここに宿泊するという話は聞いていたけれど
まさか勇人までが宿泊するとは思わなかった。


「成瀬く… いえ、彼の実家は都内です。宿泊の必要はありません。
何かの間違いじゃありませんか」
「そう言われてもねぇ。こうして予約が入っているのは事実だし」



都内に実家がある彼は日本に居る間は実家で過すものとばかり思っていたのに
見せられた予約表の写しには、確かに明日から一週間、ステイの予約が入っている。


「で、藤崎さん? あなた、成瀬氏とは中高の同級生なんですってね?」
「はい、そうですが…」


それが一体何の関係があるというのだろう?
そう思ったところに慌しくドアを叩く音がして
返事を待たずにドアが開いた。



「あら、小野田部長。女性の部屋に入るのにイキナリはいかがなものか、と思いましてよ?」



「ノックはしただろう」とおたおたわたわたと部屋へ駆け込んできて
「それどころじゃないよ」と男性にしては小柄な細い体がウロウロとする姿が
どこか小動物を思わせるこの人は宿泊係の部長。
その仕事柄なのかもともとの性格なのかは分からないけれど
いつも人の顔色を伺ってビクビクしているような印象がある。


「藤崎くんには話をしたかね?」
「ええ、小野田部長があと3分遅ければ」
「っ・・・早く話たまえ!」


はいはい、とあきれ顔で小さく両手を上げたチーフは
ソファの椅子に座るようにと私に目くばせをした。


「まず結論から話すわね。成瀬氏の滞在中、貴女にそのお世話をお願いしたいの。」