「のぶちゃーん!」



げっ、濱村だ。

あいつ、ほんと金魚のフンみたいに果てしなくついてきやがる。

あたしはとっさに、持っていた紙ヒコーキをくしゃっと丸めてスカートのポケットにいれた。

濱村は、その行動には気付かなかったらしく、アホみたいな笑顔を浮かべてあたしに近づいてきた。

「のぶちゃん、またサボリだ」

「お前だってサボってんだろ。授業戻れよ」

――お前まであたしみたいに汚れなくていいんだよ――。


「のぶちゃんが戻るまで戻らんもん」

「めんどくせぇなあ……勝手にしてろ」


あたしはそう言うと、スカートのポケットに手を突っ込みながら、スタスタと階段を上った。

まだ、左ポケットにはちゃんと丸めた紙切れの感触がある。確かにそこにあるんだ。


「あっ、待ってよのぶちゃーん」

濱村が、慌ただしくあたしを追いかける。



カミサマ。


退屈しのぎにあたしを幸せにしてくれるのか?


カミサマ。


もしかしてもう、始まってるのか?


カミサマ。

あたしの背中に伝わる、あたしを呼ぶ声。これが幸せってやつなのか?


カミサマ。




あたし
久しぶりにワクワクしてるよ。