ジレンマ(仮)




亮太と別れて5分くらい経った。

早く亮太戻ってこないかなー・・・。



「ごめん、待った?」


「待ってないよー・・・・・・カケル?」



亮太だと思って振り返ると、そこには亮太はではなく、カケルの姿が・・・。

カケルと会うには、心の準備をしなくちゃいけないのに・・・まだ心の準備ができてないよ・・・。

それに、よく考えてみたら亮太はあんなこと言う性格じゃない。

油断していた。


カケルはふわりと優しく微笑んだ。
だけど、何だか目が笑っていないような気がして、少し怖くなった。



「なんだ、本当に誰か待っていたのか」


「・・・うん」


「・・・」


「・・・」



亮太と喋っている訳じゃないのに、変な沈黙が流れた。

カケルは微笑んでいるのに、何も喋らない。

私も、何も言葉が出てこなかった。

ただ、胸が締め付けられる思いでいっぱいだった。



「・・・カケル?」



突然下駄箱の影から亮太が出てきた。

亮太は野球のユニホームから、見慣れた制服姿に変わっていた。



「悪い、遅くなった」



悪いと言いつつ、顔色一つ変えないで無表情のまま亮太は言った。

本当に悪いとは思っていなさそうだ。