「・・・雨だから校内を走っていたけど、滑って怪我した奴がいるから中止になった。だから、もう帰る」
「そうなんだ」
「うん・・・あ、一緒に帰る?」
私は亮太の言葉に少しビックリした。
亮太と一緒に帰るのなんて、小学生の時以来だったから。
ちょっと迷ったけれど、懐かしくなって笑顔で返事を返した。
「うん、一緒に帰る!」
「じゃあ着替えてくるから、ちょっと待ってて」
「わかった」
ニコニコしながら答えると、亮太は笑顔を返してくれた。
亮太は教室に向かって歩き出した。
私はその後ろ姿をジッと見つめていた。
そして逞しくなった背中を見て、亮太も大きくなったなー・・・としみじみ思う。
小学生の時は私より背が小さかったのに、あんなに育っちゃって・・・。
なんだか私だけ1人、取り残されたみたいだな・・・。
少しだけ、ほんの少しだけ、寂しい気持ちになった。
ぽっかりと胸に小さな穴が空いたみたいだ。
だけど、それは今に始まったものじゃない・・・。
私は雨音を聞きながら、土のような、鼻にツンっとくる雨独特の匂いを何となく嗅いで、土砂降りの雨の降る玄関先にあるグランドを眺めながら、亮太を待った。
