常初花

いつかのセレブ奥様と彼女の会話がちらりと頭を過ぎった。



『病院の帰り?毎日大変ねぇ』



いや、病気やだからって毎日通うようなことはないよな。


だとしたら、やっぱり身内の見舞いか。


あ、もしかして、看護婦さんとか。



彼女が痩せて行く理由や、病院通いの訳を知りたいと思うが、会話の中にそれを訪ねる緒口が見つからないまま。




山裾が赤く紅葉を始めた、肌寒い季節。
彼女は、ぴたりと店に来なくなった。



1日、2日、と日数を数えて、一週間経っても彼女は顔を見せない。


気づけば、ひと月。



木々はますます色鮮やかに紅葉を進めていくというのに。
俺の唯一鮮やかだった時間は、急速に色褪せて行った。