常初花

「いらっしゃいませ。今日はフジが良いの入ってますよ」

「ほんとですか?じゃあ、それにしようかな」



あれから、林檎のオススメを聞かれたり。
天気の話をしたり。


その程度なら、笑って会話ができるようになった。


毎日1個の理由を、尋ねて見ても良かったかな、と閉店してから何度か思ったが。


気軽に(あくまで客と店員という括りの中で、だが)話せるようになった事実が嬉しくて気にも留めなくなった。


毎日1個、買ってくれるから毎日会えるんじゃないか、とそう思うようになったからだ。


そうやって、顔を見て話すことができるようになって、気付いた事がある。


夏頃から比べて、彼女が随分ほっそりとしたように感じた。


元々白い肌で、余計にかもしれないが、血色が悪いように見えた時もある。