俺の幼馴染が鈍感過ぎる


燈が帰ってすぐ、俺も登校する時間になったので家を出た。

ゆうの家は真裏にあるので、家と家の僅かな隙間に身体を滑り込ませた。

小さい頃は余裕だったのに、今じゃ少し狭い。

それでも前へと進めば、どうにか道路に出た。

あっという間にゆうの家の前につき、インターフォンを鳴らしす。

ゆうは朝が弱いから、こうして早く出て来るように呼ばなきゃならない。

まぁ、朝が弱いゆうの寝呆けた顔も可愛いから、面倒だと思った事はねーが。

「はーい。あら?美波くん。ゆうなら、もう出て行ったけど…」

ゆうの声を少し大人びた感じにすれば、丁度こんな感じになるだろうという声で、ゆうの母が信じられない事を言った気がする。

「えっと…ゆう、もう学校行ったんですか?」

「…?えぇ、そうよ」

最悪だ。

毎日、一緒に帰れる事は少ないから一緒に登校する事を楽しみにしているのに。

楽しみが減った。

あぁ、朝一でゆうの顔を見れないなんて、何て不幸なんだろうか。

そうじゃない!考えるべきは、そこじゃないだろう!俺!

「え?ゆう…今日は、起きたんですか」

「そうなるわね。ゆう、今日は自分でアラームをセットして、起きてたわ」

さっきも言った通り、ゆうは朝が弱い。

つまり、俺が呼びにこないと、完璧に寝坊する子なのだ。あの子は。

「本当、びっくりよね。あの子が美波くんに呼ばれなくても自分で家を出るなんて」

「すいません…もう、行きます」

これ以上喋る気分では無いので、インターフォン越しに見ているであろうゆうの母に向かってぺこりと頭を下た。

何と無く顔を上げると、雲一つない青い空が広がっている。

あぁ…何て良い天気。

あぁ…何てどんよりとした俺の心。

ゆうのいない不幸を噛み締めながら、歩いた。

今までは遠いと感じなかった高校までの道が異様に遠く感じる。

と、思っていたんだが、ゆうのことを考えているうちにあっという間に着いてしまった。

…新しい発見だ。

隣にいなくとも、ゆうの存在が俺の脳内にある限り、俺は結構幸せらしい。

…脳内?

知りたくも無い事を知ってしまった。

どんだけダメ人間だよ、俺。