あの後、ゆうとは喋れないまま…放課後がきてしまった。
「優明、一緒に帰るぞ」
俺が声を掛けたいのに、先回りをして燈が声を掛ける。
朝の威嚇(?)が効いているのか、女子共も燈とゆうに話しかけられていない。
「う、ん…」
何だろう。ゆうの様子が変だ。
浮かない顔をして、制鞄を握ったり放したりしている。
「ちょっと、待ってて?」
何かを決心したのか、制鞄から手を放し…放し……
こちらに向かって歩いて来る⁈
どう言う事だ?
いや、冷静になれ、俺‼
こういう時、テレビでは必ず俺ではなく、後ろの奴に話しかけるために近づいて来るんだ。
ほら、後ろに人が…いるわけねぇよな、壁だし。逆に、いたらびっくりだよな。
ってことは…
「なみ。もう…ぅぅん…誰と付き合ってもいいからね」
何と無く言いにくそうにそう告げると、燈の元に戻って行ってしまった。
俺は…どうすればいい?
こんなにも呆気なく、ゆうが他の奴のところに行くなんて。
少し俺は、現実を甘く考えていた。
誰がいても、俺の傍にいてくれるんじゃないかと思ってた。
違うんだな。
ゆうは、決して俺のものでは無くて、必死で繋ぎ止めた関係には、あまり意味は無くて…。
こんな事なら、悪戯なんてするんじゃなかった。
もっと、伝え方があったはずなんだ。
それはまだ分からない。
でも、俺は…間違ってる。
ヤキモチをやかせたくて、好きでもない女とキスをした。
実は、他にもいろいろとした。
他の女と必要以上に近寄った。もちろん、ゆうがいるとわかった上で。
…思い返してみると、その時は名案だと思ったのに、何て馬鹿らしいことをしてきたんだ?俺は。
これじゃ…言葉で好きって言っても、態度が違うじゃないか。
…子供か?俺は。
違うだろう?
そうじゃない。もっと、することが…あるだろう?