半ば引きずられるように引っ張られながら、玄関まで下りてくると見慣れない女の子が靴箱の前に立っていた。


 肩下まである髪の毛を内巻きに巻いた、私よりも背の高い女の子。


 小さな顔に少し猫みたいな瞳の綺麗な女の子は、私と同じ二年生ではないと思う。


 学年全員を把握しているわけではないけど、こんな女の子はいなかった気がする。


「桐生先輩、一緒に帰るんじゃ・・・」


 少し高い声の彼女がそう言って、ああ・・・と気が付く。


 彼女が綾の言っていた、自動販売機の横で告白していた一年生、だ。


 一緒に帰る約束、してたんだ・・・・・。


 そこは知りたくなかった、かも。


 見上げながら彼女顔を見つめる。


 童顔の私よりずっと大人っぽく見えるな・・・背が高いのってやっぱり羨ましい。


 榛くんの隣に立っても全然違和感がないくらいの身長差が、羨ましい。

 
 見上げないと見れない私とは違って、視線を少し上げるだけでいい彼女。


 そんな彼女に見下ろされる私・・・・・。


「こいつを送るから今日は帰れない」


 その一言に見下ろされてしまった私。


 明らかに不機嫌そうに歪められた顔が、私を責めるように見つめる。


「あ・・・あの、は、榛くん、私なら、大丈夫だから。自分で帰れるし・・・。彼女と帰ってあげて?」


 いたたまれない気持ちになって、榛くんにそう言ってみたけど、榛くんは掴んだ腕を離そうとしない。



「ほ、本当に大丈夫だから・・・」


 そう言う私の顔をチラッとだけ見て、靴箱から靴を出すと


「早くしろよ」


 と履く様に促す。



「う、うん」


 靴を履くと直ぐに引っ張られて、玄関へと向かう。


「榛くんっ、彼女はどうするの?」


 
「今日は帰れないって言った」


「そう、だけど・・・」


 じっと見つめる彼女の視線が痛くて、私は落ち着かない気持ちだった。


 そんな事を全く気にする風でもなく、榛くんはどんどん歩いて行く。


 私の手を握ったまま、まっすぐに前を向いて―――――。