授業中、私の席から榛くんはよく見える。


 私の右の前の席。

  
 黒板に目をやれば自然と榛くんの姿も視界に入る。


 ノート、真面目にとってるな、とか、全然授業聞いてないなって、見ていたらよく分かる。


 真面目に授業を聞いても聞かなくても、榛くんはいつも学年トップ。


 成績優秀で運動神経も良くて、おまけに顔もいいなんて・・・・・。


 美織ちゃんといい榛くんといい、神様は偏りすぎなんだよ。



 頬杖をついて広い榛くんの背中を見つめていると、その背中がふいに動いて榛くんが後ろを見た。


 ビクッって肩が揺れてしまう。


 見てたの、バレたかな・・・・・?


 あからさまに逸らした視線は不自然で、ぎこちなかった。


 あれでばれてないわけ、ないよね・・・・・。



 きまずくて授業が終わるまで視線を上げることができず、一時間目の授業がいつもより長く感じた。


 

 お昼休み―――――。


 教室で綾とお弁当を広げる。

 
 学食に行ったり、中庭で食べたり、意外と教室の中は人が減って別のクラスから綾が来ても、座れないとかって事はない。


 榛くんもいつもお昼休みは教室にいない。


 学食なのかどこかでお弁当を食べているのかも私は知らない。


 同じクラスになっても、知ってることなんて数えるくらいしかない。


 私の知ってる榛くんは小学生の頃だけだもの。



「ねえ、美伊」


 綾がコーヒー牛乳にストローを差しながら、視線を向ける。


「ん?」



「余計な事だと思うけど、桐生君、さっき売店の横で告られてたよ、一年の女子に」


「え・・・?」


 さっき売店でパンとコーヒー牛乳を買ってきた綾が、メロンパンを大口開けて食べながら



「コーヒー牛乳の自販機の横で。偶然聞いちゃってさ・・・」


 
「そ、そう、なんだ・・・・・」



 それ以外、言葉が出てこなかった。


 別に、榛くんが告白されたのは今回が初めてって訳じゃない。


 中学の時はもう少し地味な感じで、人気はあったけどキャーキャー騒がれるほどじゃなかった。

 でも、年々、榛くんがカッコよくなっていっちゃうから・・・・・。


 高校に入った時に、ずっとかけていた眼鏡をコンタクトに変えた榛くん。


 カッコよかったのが、更にカッコよくなって。


 今では告白なんて日常的にあるんじゃないかってくらい、モテてる。


 最初に告白されたって聞いたときは、ショックっていうよりも遠くなった気がして落ち込んだけど。


 今は聞いてもそれほど落ち込んだりしない、動揺はするけど・・・・・。


「結構可愛い子だったよ?いいの?」


「いいのって?」